第24回 個別授業 算数の学習(2023年3月7日~9日 ワキソ地区アクライトシティ 開催)
2023年3月7日から9日まで、第24回ウガンダ学習支援として、ワキソ地区アクライトシティで、経済的に学校に行くことが困難な子供3名に算数の個別学習指導を行いました。
今回、算数の個別学習指導に参加してくれたのは、下記の3名です。
〇パビンくん (12歳)
いつも明るい笑顔を見せてくれ、毎回の学習支援イベントでも人懐っこく私に話しかけてくれています。
パビンくんは12歳ですが、小学校1年生の時に学校に通った経験があるだけで、それ以降は経済的な事情で学校に通うことができていません。
ウガンダの公立小学校は1997年から無償化されていますが、増え続ける子供の人数に政府からの予算が追いついておらず、多くの公立小学校は昼食費を含めた授業料や、制服、ノート、エンピツ、トイレットペーパーなど、さまざまな費用の負担を子供たちの家庭に強いているため、小学校にも通うことが困難な子供たちが数多くいます。
このような背景から、パビンくんは学校に通うことが困難な状況で、数字も1から10まで数えるのがやっとの状態です。
〇マロウくん (5歳)
マロウくんはとてもおとなしい子で、学習支援イベントに参加しているときも、みんなでするゲームの輪に入ることが難しかったり、みんなで話をするときも声を出さずに一人で静かに座っているタイプの男の子です。
幼稚園に通ったことがないだけでなく、家庭でも数の数え方などを教えてもらったことがありません。
お父さんは日雇い労働でなんとか家族を養っている状況で、ぜひマロウくんに数の数え方を教えてあげてほしいとのことで、今回の個別学習指導に参加をしてくれました。
〇グロリアちゃん (9歳)
グロリアちゃんは、もし学校に通っていたら現在は小学校3年生の年齢です。
グロリアちゃんは2年生まで小学校に通っていましたが、突然、お父さんとお母さんがグロリアちゃんを置いて行方不明になり、学校に通うことができなくなってしまいました。
現在は、おばあちゃんと親戚の家族たちと一緒に暮らしていますが、両親が不在のため小学校の学費を負担できる人がおらず、毎日家の手伝いをして過ごしています。
目次
個別学習指導1日目 (3月7日)
〇出席者
パビンくん、マロウくん
1. 1から10までの数の数え方、書き方
- 1から10までの数字を読めるようになろう
- 1から10までの数字を書けるようになろう
- 1から10までの数字を数えられるようになろう
〇準備するもの
- 幼児用学習プリント 数字の表(1から100まで)よこのすうじでおぼえよう
- 幼児用学習プリント 数字のなぞり書き 数字のなぞりがき(1~10)
- 小学生用学習プリント 10までの数(数えて色をぬろう)かんたん 1~5
- 数字カード (1から10)
- 動物カード (1頭から10頭まで)
数字を読もう
子供たちとの最初の学習は、数字の表を使って1から10までの数字を読む練習です。
まずは私を含めた3人で現地語のガンダ語で1から10まで数える練習をし、その後、英語で数える練習をしました。
パビンくんは順番通りであれば英語でも数えられるので、マロウくんをリードしながら2人で数字を読む練習をしました。
数字を書こう
学校に通っていない2人は、数字を紙に書く機会もほとんどありません。
そのため、数字を何も見ないで書くことは難しいので、数字がなぞり書きできるプリントで一つずつ数字を書く練習をしていきました。
なぞり書きそのものにも慣れていない2人なので、数字を書く時も、とにかく線をなぞることに精一杯で、数字を覚えながら書くというよりは、点線を埋めていく作業に近かったかもしれません。
数を数えよう
数を数える練習として、1頭のキリン、2頭のライオンなどが描かれた10枚の動物カードをランダムに見せ、何頭の動物の絵が描かれているか答えてもらうようにしました。
マロウくんはまだまだ数を数えるのが難しい状況のため、パビンくんが答えた後に続けてマロウくんが答えていく流れで進んでいきました。
次に、動物カードと数字カードを使いながら、2人に動物カードに描かれている頭数と同じ数の数字カードを選んでもらう遊びをしました。
数字が順番に並んでいたらどの数字か分かるパビンくんですが、数字カードがランダムに置かれている状態では、動物カードの頭数と同じ数字を見つけるのは少し大変そうでした。
特に「6」と「9」、「3」と「8」などの形が似ている数字は混乱しているようで、間違えが多くありました。
最後は、数字と同じ数だけ〇を塗るプリントをして、今日の学習が終了しました。
数字が順番に並んでいないときも、それがどの数字か分かるように明日も練習しようね。
個別学習指導2日目 (3月8日)
〇出席者
パビンくん、マロウくん、グロリアちゃん
2. 1から10までの数の数え方、書き方
- 1から10までの数字を読めるようになろう
- 1から10までの数字を書けるようになろう
- 1から10までの数字を数えられるようになろう
〇準備するもの
- 幼児用学習プリント 動物のてんつなぎ-かんたん ぞうのてんつなぎ
- 幼児用学習プリント 乗り物のてんつなぎ-かんたん 救急車のてんつなぎ・小学生用学習プリント 10までの数(読みましょう・書きましょう) 読みましょう・書きましょう
- 小学生用学習プリント おおきいかず(数の並び方)むずかしい 1
- 数字カード (1から10)
- 動物カード (1頭から10頭まで)
点つなぎ
まずは1日目のおさらいとして、数字が順番に数えられるか確認するため、1から10までの点つなぎを3人にしてもらいました。
今回は、ぞうと救急車の二種類の点つなぎのプリントを用意。
これらは両方とも1から10までの点つなぎですが、ぞうの方は近くにある数字をつないでいくだけで1から10までが順番につながるようになっているのに対し、救急車の方は横に進むか上に進むかを間違えると、順番通りにつながらないようになっています。
そのため、これら二種類の点つなぎを用意することで、ぞうの方でウォーミングアップをしながら、救急車の方で数字の順番を覚えているかを確認することができます。
案の定、パビンくんは救急車の方の点つなぎに引っかかってしまい、もう一度、数字の表を見ながら訂正をして順番を確認しました。
数字を書こう
次に、1日目に練習した1から10までの数字の書き方の復習をしました。
1日目はひとつずつの数字を何度も書きながら練習をしましたが、今日は、1から10までの数字を続けて書く練習です。
確認したところ、グロリアちゃんは100までの数字を書くことができるとのことだったため、グロリアちゃんには1から100までの数字を書く穴あきプリントをしてもらうことにしました。
グロリアちゃんは100までの穴あきプリントを1つ間違えた程度で、残りはしっかりと正しい順番で数字を埋めてくれました。
パビンくんは1から10までの穴あきプリントをしましたが、7と9の向きを間違えて書くなどしていて、まだ数字の書き方をしっかりと覚えていないようでした。
マロウくんは1日目とあまり変わらず、ずっとおとなしく座ってパビンくんとグロリアちゃんのしていることを眺めるだけで、数を数えることも書くことも難しそうだったため、一緒に鉛筆を持って数字を読みながら書く練習をしました。
数を数えよう
今日は3人が学習指導に参加してくれましたが、3人の数字に関するレベルは大きく異なっています。
100まで数えられるグロリアちゃん、10まで数えるのがやっとのパビンくん、数字はひとつも数えることができないマロウくん。
そんな3人が一緒に数字を学んでいるため、3人それぞれの歩調にあわせながら学習指導を行う必要があります。
数を数える学習については、1日目と同じ動物カードの頭数と同じ数字カードを取ってもらう遊びをしました。
しかし、先ほど記した通り、この3人で1日目と同じ遊び方をするとグロリアちゃんの一人勝ちとなってしまうので、グロリアちゃんには1日目に私がした動物カードを見せる方の役をしてもらい、他の2人が取った数字カードが正しいか判断をしてもらうことにしました。
グロリアちゃんは100まで上手に数えることができるから、明日はたし算の練習をしようね。
個別学習指導3日目 (3月9日)
〇出席者
パビンくん、マロウくん、グロリアちゃん
2日間を通して子供たちの算数レベルが分かったので、3日目はそれぞれのレベルに応じた算数の学習を行いました。
各自の学習目標
- パビンくん:1から10までの数字の読み書き、数え方を覚える
- マロウくん:1から3までの数字を覚える
- グロリアちゃん:足し算、引き算のやり方を覚える
〇準備するもの
パビンくん
- 幼児用学習プリント 昆虫のてんつなぎ-かんたん クワガタのてんつなぎ
- 幼児用学習プリント 数のぬりえ 数のぬりえ「くるま」
- 幼児用学習プリント 量・大きさ・高さ・長さ 量1
マロウくん
- 幼児用学習プリント 数字のなぞり書き 数字のなぞりがき「1」「2」「3」
- 数字カード (1から3)
- 動物カード (1頭から3頭まで)
グロリアちゃん
- 小学生用 学習プリント 2つの数の足し算の練習問題 足し算むずかしい12
- 小学生用 学習プリント 2つの数の引き算の練習問題 引き算むずかしい12
- 小学生用 学習プリント 3つの数の計算の練習問題 3つの数の足し算8
学習内容
- パビンくん
パビンくんは、まだ1から10までの数字を覚えることができていないため、3日目も1から10までの数字を覚える学習をしました。
まずは2日目と同じように点つなぎからスタート。
今日は、2日目の救急車と同様に、進む方向を間違うと順番どおりにならない1から10までの「クワガタ」の点つなぎを行いました。
しかし、パビンくんは今日も順番通りつなぐことはできなかったので、数字の表を見ながら訂正をしてもらいました。
次に、数の数え方を学習するために、指示された数の通りに色を塗っていく「数のぬりえ」をしていきました。
車の数のぬりえでは、赤で4台、青で7台、緑で3台塗るように指示されていますが、青で4台、緑で6台塗るなどしていたため、再度やり方を教えてこちらも訂正をしてもらうようにしました。
最後は、量を比べるプリントです。
右と左を比べて、どちらの数が多いか印をつけるプリントをしましたが、こちらは数の表を見ながら行ったため、10を超える数も比較的上手に数えることができていました。
- マロウくん
マロウくんはまだ、数字の1すらも覚えることができていません。
そのため、今日は1から3の数字を覚えることに注力をしました。
数字カードを見ながら1から3までの数字を読む練習、そして、動物カードで1から3までを数える練習、最後に1日目に行った数字を書く練習を1から3まで行いました。
マロウくんは最後まで1から3までの数字を覚えることができませんでしたが、今までは、数字を見せても誰かの後に続いて声を出すことしかできずにいましたが、今日はときどき自ら数字を読む場面もあったりして、少しずつ数字の学習に慣れてきている様子を感じることができました。
- グロリアちゃん
グロリアちゃんは足し算もできるとのことだったので、今日は足し算や引き算の学習を行いました。
2つの数字の足し算や引き算は、小学校に通っているときに学習していたとのことで、上手に計算式を解くことができていました。
ただ、3つの数字の足し算や引き算は初めての学習だったようで、やり方を教えながら計算をしてもらいました。
これは学習指導の後の追加指導の際に分かったことですが、グロリアちゃんは、足し算ばかり、あるいは引き算ばかりのプリントであれば、常に同じことの繰り返しで解けるため問題なく進めることができますが、実は+と-の記号を見ても、どっちが加える方で、どっちが差し引きする方か分からないとのことでした。そのため、3つの数字の計算式の中に+と-が混ざっている場合は、ほとんど解くことができませんでした。
今日は、みんなのレベル別で学習したからそれぞれ集中力があって、あっという間の1時間だったね。3日間で学習したことを生活にいかしてね。
まとめ
今回は、経済的に学校にいくことが困難な3人に算数の個別学習指導を行いました。
パビンくんは、数字を見てもそれがどの数字かを答えるのは困難な状況ですが、何も見なくても1から10までの数字を言うことができます。
これは、ウガンダで大人から子供まで幅広く流行っているドイツのボードゲーム「イライラしないで(Mensch ärgere Dich nicht)」に似たすごろくゲームで友達と一緒にいつも遊んでいて、その中で覚えていったことが理由ではないかと思います。
3日間という短い期間で、どれだけ子供たちの学習に貢献できたか分かりませんが、今後も引き続き、学習支援イベントなどで子供たちの成長を見届けていけたらと思います。
ウガンダ在住
学習支援スタッフ
2012年12月よりウガンダ在住。
ウガンダ人の夫と13歳違いの娘二人とともにウガンダで生活しています。
我が家の公用語は日本語。日本に10年以上住んだウガンダ人の夫も、ウガンダで生まれた次女も、家族4人で常に日本語で会話をしているため、私の英語力よりも次女の日本語力の方が上達中です。
ウガンダ学習支援では、学校に通っている子も、経済的に学校に通うことができない子も、平等に学びの機会が得られるよう、無料プリントサイトの強みを活かし、「ぬりえ」「数字の学習」「日本文化紹介」など、さまざまな学習のサポートを実施しています。
ウガンダの小学校は義務教育でありながらも、制服代、文具費、給食費などが払えずに学校に通うことができない子ども達が数多くいます。
こういった子ども達の将来のために、少しでも子ども達の学びに貢献できるよう、ウガンダでの学習支援を続けていきたいと思います。
この記事が気に入ったらシェア